採用時の薬物検査は、どう対応すれば良い?

近年では新入社員を採用する際に、薬物検査を行う企業も増えています。

なぜ採用時に薬物検査を行う必要があるのかというと、違法薬物を使用する若年層が増加傾向にあるためです。

違法薬物使用者の雇用を未然に防ぐという意味でも、薬物検査は企業にとって重要な役割を果たしています。

採用時の薬物検査の意図

企業が社員の採用時に、薬物検査を行う理由としてまず挙げられるのは、「薬物不祥事」によるリスクをあらかじめ回避するためです。

企業のクリーンなイメージを保つためにも、薬物乱用者の採用は控えたいものです。「採用時薬物検査有り」ということを事前に提示することによって、薬物乱用者は自ずと遠ざけられるという事になります。

またこのような企業は、採用後も定期的に薬物検査を実施する可能性が高いと予想されるため、薬物検査は採用後の従業員の違法薬物使用を抑制する働きまで担っているのです。

薬物検査は同意の上で行われる

事業者が薬物検査を行う際、個人情報保護法第17条および18条の内容に従って、薬物検査を行う目的を説明した上で、被験者本人からの承諾を得る必要があります。

第17条 個人情報取扱事業者は、偽りその他不正の手段により個人情報を取得して はならない。
第18条 個人情報取扱事業者は、個人情報を取得した場合は、あらかじめその利用 目的を公表している場合を除き、速やかに、その利用目的を、本人に通知し、又 は公表しなければならない。
2 個人情報取扱事業者は、前項の規定にかかわらず、本人との間で契約を締結することに伴って契約書その他の書面(電磁的記録を含む。以下この項において同 じ。)に記載された当該本人の個人情報を取得する場合その他本人から直接書面 に記載された当該本人の個人情報を取得する場合は、あらかじめ、本人に対し、 その利用目的を明示しなければならない。ただし、人の生命、身体又は財産の保 護のために緊急に必要がある場合は、この限りでない。

引用: 個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)[PDF]

承諾を得られない場合は、もちろん薬物検査は行えないことになり、採用もできないということになります。

薬物検査の結果が、陰性であることを採用条件として検査を受けてもらったのであれば、陽性反応が出て「薬物を使用した」という事実確認ができた時点で、採用は見送っても良いでしょう。

採用時の薬物検査に引っ掛かった場合

薬物検査の結果、もしも陽性反応が出てしまった場合はどうなるのでしょうか。

陽性反応が出た場合には、検査結果を受け、企業側へ医学的な説明の機会が設けられることになります。

その後、被験者には事実確認が行われます。薬物依存者ではないか、それとも違法薬物以外の薬物で引っ掛かったのか、ということについても調査されます。

もしも違法薬物ではないということが面談で分かった場合には、もちろん薬物乱用者ではないとみなして良いでしょう。

企業によっては、薬物乱用が認められる被験者について、医療機関や警察に相談するという対応を取る場合もあります。

補足すると、刑事訴訟法第239条1項によれば、薬物の陽性反応が出たとしても民間企業においては通報する義務はありません。

薬物検査で陽性反応が出たからといって、警察に通報する企業よりも、医療機関に相談する企業の方が多いという傾向にあります。

「違法ではない薬物」というのは、心療内科などで処方される精神安定剤や抗不安剤、睡眠薬、抗うつ剤を指しています。

これらの薬を処方箋どおり、適切に飲んでいる場合は乱用にはあたりませんが、過度な摂取がみられる場合には、薬物乱用だとみなされることになります。

市販薬でも同様のことが言えます。市販薬でも大量に摂取してしまうと、それは乱用にあたります。

このように、市販薬や処方箋の乱用がみられた場合には、被験者に対して自身の健康のためにも、医療機関を頼るように勧めることが大切です。

薬物乱用者が検査結果に細工をすることも

薬物乱用者が、検査に引っ掛からないようにするために、細工を施す場合もありえます。薬物検査でもっともポピュラーなのは、尿検査です。

尿検査の3~4時間前に、水を2リットルほど飲むなどをして、尿に含まれる薬物の成分を薄めたり、他人の尿を持ち込んだりするというケースも考えられます。

水を大量に飲んで検査を欺くような例については、検査で正常な数値が出なくなってしまうため、再検査になることがほとんどです。

検査結果を欺くために、被験者が他人の尿を上手く持ち込んでしまうような場合、そのまま薬物検査をパスしてしまうというケースもあります。

実際にアメリカでは、他人の尿で薬物検査をパスしたという例も認められているので、予防策も必要です。

こういった不正を許さないためにも、社内での検査体制は、より厳格化をする必要もあるでしょう。