公務員の薬物検査について

高いモラルが求められる公務員

日本国憲法第15条第2項において、「すべての公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」と規定されています。
また、同法第99条において、「憲法を遵守し擁護する義務を負ふ」ともされています。
つまり、国に奉仕するはずの公務員が違法行為を犯してしまった場合、公務員としての義務を果たしていないとみなされてしまいます。
また、違反したのはたった一人であったとしても、公務員全体のイメージをダウンさせ、国民からの信頼を失墜させてしまいます。
その他、公務員には犯罪発生時の通報義務があり、他の職員が薬物を乱用していたところを認めた場合、必ず警察に通報しなければなりません(医師、公務員以外は通報義務無し)。
このように公務員は、一般の国民よりも高いレベルでコンプライアンスの遵守が求められているのです。

政府の取り組み

  日本政府としては、厚生労働省を中心として薬物乱用対策推進会議を開き、国を挙げた取り組みを行っています。
  これを受け、各省庁、各地方自治体においても薬物乱用防止施策が実施されています。

公務員の薬物乱用事件

2019年5月、文部科学省の職員が覚せい剤と大麻所持により、麻薬取締部に逮捕されるという事案がありました。
当時はニュースや新聞でも大きく取りざたされ、話題となりました。
その他にも、公務員が薬物乱用により逮捕されたときは、大なり小なり実名で新聞報道がされています。
芸能人などの有名人ならいざ知らず、普段は全く名前も聞かないような人が逮捕されただけで、なぜ実名報道されるほどの騒ぎになるのでしょうか?
その原因は、公務員という立場の特殊性にあります。

公務員への薬物の抜き打ち検査

薬物乱用防止施策の一例として、防衛省では、自衛官に対する抜き打ち薬物検査を行っています。
これは、検査対象となる自衛官を無作為に選出し、本人に知られることのないよう抜き打ちで検査を行うというものです。
この検査で陽性反応が出た隊員は懲戒免職となるため、組織内に薬物の乱用が蔓延することを防止するとともに、乱用を未然に抑止させることができます。
抜き打ち検査は、薬物乱用を防止するための有効な手段の一つと言えるでしょう。
一方で、抜き打ち検査を実施するためには注意しなければならない点があります。
この検査は、前提として本人の同意が必要であるため、検査対象者が検査を拒否した場合、検査をすることができません。
そうなると、検査を受けた人間と検査を拒否した人間との間で不平等が生じるばかりか、その後の人権問題に発展してしまう可能性すらあります。
抜き打ち検査を実施する際には、検査対象者に事前に同意書を作成させる等任意性を担保することに加え、検査対象者が検査を拒否した場合における対応について、部内規則で基準を設けるなどの対策を施す必要があります。