あまり考えたくない事ではありますが、最近のニュースを見ていても、私達の周りにも薬物との距離はそれほど遠いものではないということがわかります。
企業においてもそれは例外ではなく、良いと思って採用した従業員が実は薬物乱用者だったということも、起こりうるのです。
それを防ぐために有効な手段となるのが薬物検査なのですが、この薬物検査を実施するとしたら、いったいいくらでできるのか、また、どのような検査方法があるのか?ということが問題となるでしょう。
まず、薬物検査にはどのような方法があるのかについて、いくつかご紹介していきます。
薬物検査の方法にはどのようなものがあるのか
薬物検査の方法は大きく分けて、次の4つのものが挙げられます。
・尿検査
・血液検査
・毛髪検査
・唾液検査
では、薬物検査には費用がいくらくらいかかるのか?という疑問の前に、薬物検査方法にはどの方法にどういったメリット・デメリットがあるのかということも踏まえて、検査方法をまとめてみました。
尿検査
よくニュースでも取り上げられている検査方法として尿検査が挙げられます。
薬物乱用者(重度)の方が検査した場合、薬物の使用後10日が経過した後も陽性反応が出ることがあるとされます。
不正を防止するため、検査には同性の係員が立ち会うこともあります。デメリットとしては検出できる期間が短いことでしょう。
薬物摂取をした回数や量などにもよるのですが、およそ1~4日間ほどの期間内であれば、陽性となります。
一部の薬物は代謝物などが残存するため、使用を止めてもある程度の期間は、陽性のままであることもあります。
血液検査
その名の通り、血液内から薬物反応があるかについて調べる検査方法です。しかし、デメリットが多く、注射を使用して生体を傷つけてしまう検査であることや、多くの薬物の検査で検出可能である期間が短いため、あまり広く行われることがない検査であると言えます。
毛髪検査
毛髪により、薬物反応があるかについて調べる薬物検査方法です。検出可能である範囲が狭かったり、他の検査方法と比べると正確性は低かったりするというデメリットが挙げられます。
そのため、薬物検査として広く利用可能というわけではないのですが、検出期間が長く、月や年単位の検出が可能と言われています。
また一部の薬物においては、検出可能期間が100日以上と、最も長い期間で検出が可能になります。
唾液検査
尿検査など、他の薬物検査方法などと比較して、より簡単・手軽にできるうえに、検査をする方の負担を軽減されるというメリットがあるということから、最近では薬物検査方法として注目が高まっている検査です。
検査可能期間は尿検査と同程度で、薬物を常習的に使用している方が検査をした場合、使用後10日ほど経過した後でも陽性反応が出ることがあります。
薬物検査はいくらくらいでできるのか
薬物検査の方法や種類についてご紹介してきましたが、具体的に料金はどのくらいかかるものなのでしょうか?
一般的な検査機関における尿検査にかかる費用は10,000円前後、毛髪検査は100,000円前後ほどとなっています。
また近年では、薬物検査を実施する病院も増えています。病院で行われる薬物検査はおもに尿検査が一般的です。
料金としては、覚せい剤および大麻、コカイン系麻薬、モルヒネ系麻薬の検査は5,000~7,000円程度、さきほどの4種類の薬物にさらにベンゾジアゼピン系、バルビツール酸系、三環系抗うつ薬の3種類加えて検査を行った場合、料金は10,000円程度になります。
また、血液での薬物スクリーニング検査では、85,000円前後で行われています。
ちなみにこれは参考として、警視庁刑事局がおこなう司法解剖における薬物検査は、1検体当たり80,000円で行われています。
参考: 司法解剖の実施 | 警察庁刑事局
このように、薬物検査を実施する機関では、尿検査と毛髪検査の主に2通りのパターンが用意されていることがわかります。尿検査は特に安価で、すぐに結果が出るということから選択されることが多いようです。
覚せい剤および大麻、コカイン系麻薬、モルヒネ系麻薬の尿検査 | 覚せい剤および大麻、コカイン系麻薬、モルヒネ系麻薬ベンゾジアゼピン系、バルビツール酸系、三環系抗うつ薬の尿検査 | 血液での薬物スクリーニング検査 | 毛髪検査 |
5,000~7,000円程度 | 10,000円程度 | 85,000円前後 | 100,000円前後 |
これらの情報を踏まえると、薬物検査を行う場合において、尿検査は1万円前後、血液検査や毛髪検査には10万円前後かかると見積もっておくと良いでしょう。
上記で紹介してきたすべての検査方法の料金を具体的に提示することはできませんが、薬物検査の実施方法によって料金に差があるので、事前に費用を見積る必要がある場合には、薬物検査を依頼したい機関にあらかじめ相談すると良いでしょう。
薬物検査が必要となる免許について
薬物検査など、我社には関係ない…と思われるかもしれませんが、実は薬物検査が必要な業種は意外に多くあります。
たとえば調理師や製菓衛生士、医師や歯科医師、看護師や助産師、臨床検査技師や理学療法士などの業種です。
医療系・調理系の資格を要する業種では、薬物依存者がこういった職に就いてしまった場合に、何らかの問題を起こす可能性が高くなってしまうため、特に薬物検査をパスしたという証明が必要になってきます。
多く従業員を抱える企業にとっては、薬物検査費用も人数分となると、費用がいくらかかるのか心配になられるかもしれません。
しかし薬物乱用による事故が起きた時、その補償の事などを想定してみた場合、決してその検査費用は高いものではないことがわかるかと思います。
薬物検査は社会において「信頼」を得るための指標にもなる
薬物検査を実施するにあたり、医療・調理・石油やエネルギーなどに関する業務ではなくとも、薬物関連の不祥事対応やあらゆるリスクを回避するために積極的に薬物検査を行っている企業・団体も見受けられます。
このような薬物検査を実施することにより、「私たち従業員・企業の中には毒薬物を使用していません」といったように、社会的な信頼を得られることにもつながるのです。
もし会社内の従業員を守りたい、会社のためにもリスクを回避したいと考えているのであれば、従業員を守るためにも薬物検査は必要なことと言えます。
薬物検査が義務付けられていない企業などの場合、薬物検査の費用がいくらくらいかかるのかなどと考えた時、検査の実施をためらわれてしまうかもしれません。
しかし薬物検査の実施によるコストは、社会からの信頼を得るための材料の一つにもなるため、不祥事対応・リスクなどによる補償やそれらによる逸失利益などを考えると、企業・団体における経営健全化のための妥当な出費と言えるでしょう。