社員に薬物検査を行う時の注意事項と方法

民間企業で薬物検査を行う場合、どのような点に留意すると良いのでしょうか。薬物検査を行う際の注意事項と、具体的な薬物検査の方法をご紹介します。

薬物検査を行う際の注意事項

社員に薬物検査を行う場合、まずは検査の意図と検査結果の意図を十分に説明する必要があります。社員に無断で、あるいは同意なしに薬物検査を行ってしまうと、個人情報保護法に抵触してしまうおそれがあるためです。

(3)使用者は、労働者に対するアルコール検査及び薬物検査については、原則として、特別な職業上の必要性があって、本人の明確な同意を得て行う場合を除き、行ってはならない。

引用: 労働者の個人情報保護に関する行動指針 | 厚生労働省

薬物検査の意図

薬物検査にどのような意図があるかというと、大きく次の三つが挙げられます。

  • 社会的信頼
  • 自社内の社員管理
  • 事故防止と安全の確保

以下の内容について、詳しく見ていきましょう。

社会的信頼

「社会的信頼」は、企業にとって重要なものです。従業員たった一人の不祥事で、企業の社会的信頼はあっと言う間に地に落ちてしまうものです。

信頼を失うのは一瞬ですが、信頼回復までにはかなりの時間を要します。企業はそのようなリスクを防ぐために、あらかじめ対策しておく必要があるものと言えるでしょう。

近年は特に、違法薬物で検挙される人が多いこともあり、従業員に薬物検査を実施する企業は増加傾向にあるのです。

「薬物検査をしっかりと行う企業」ということがわかると、自然と「薬物使用者のいないクリーンな企業」というイメージも伴っていくでしょう。

自社内の社員管理

薬物検査を定期的に行うことで、社員を管理することが可能にもなります。とくに採用時に薬物検査を行うことで、違法薬物を使用している人物の採用は未然に防げることになります。

また、採用後にも定期的に薬物検査を行うことで、社員の違法薬物の使用を許さないような環境づくりも可能にします。

事故防止と安全の確保

徹底した安全管理が求められる業種においては、あらかじめ薬物検査を行うことで、人為的ミスによる事故なども未然に防ぐことを可能にします。

たとえば、危険物を運ぶ大型車の運転手が薬物乱用者であった場合、薬物の影響で大きな事故が起きる可能性もあります。

その他にも、旅客機の操縦者や精密機器を扱う工場での作業者など、人の手によって細やかな作業が求められる現場において、違法薬物使用者が従事しているような場合、薬物による異常行動などで大きな被害が出る恐れがあることも推測されます。

違法薬物の乱用は、薬物使用者本人のみならず、周囲を巻き込むような、大きなリスクをもはらんでいるのです。

このような意図をしっかりと伝えることによって、様々な観点から薬物検査は重要であるということが伝えられることになります。

薬物検査にも同意書が必要

企業で薬物検査を行う際には、口頭での同意だけではなく、しっかりと同意書を用意するべきです。

冒頭でもお伝えしたように、個人情報保護法第17条および18条に基づいて、薬物検査の意図を説明した上で同意を得なければなりません。

第17条 個人情報取扱事業者は、偽りその他不正の手段により個人情報を取得して はならない。
第18条 個人情報取扱事業者は、個人情報を取得した場合は、あらかじめその利用 目的を公表している場合を除き、速やかに、その利用目的を、本人に通知し、又 は公表しなければならない。
2 個人情報取扱事業者は、前項の規定にかかわらず、本人との間で契約を締結することに伴って契約書その他の書面(電磁的記録を含む。以下この項において同 じ。)に記載された当該本人の個人情報を取得する場合その他本人から直接書面 に記載された当該本人の個人情報を取得する場合は、あらかじめ、本人に対し、 その利用目的を明示しなければならない。ただし、人の生命、身体又は財産の保 護のために緊急に必要がある場合は、この限りでない。

引用: 個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)[PDF]

同意書を作成する上で大切なポイントとして、第一に「薬物検査に同意してもらうこと」、そして「検査結果は会社に管理されること」に同意してもらうということが挙げられます。

また検査結果次第では、警察や医療機関、更生機関へ報告および相談を行う可能性があることや、採用見送りや解雇などの営業処分を下す可能性があることにも同意してもらう必要があります。

薬物検査の行い方

一般的な薬物検査の流れとしては、採取した被験者の尿や毛髪が専門機関へ持ち込まれたあと、間違いなく本人の検体であるかという事を確認します。

本人のものであるという確認が取れたあとは、スクリーニング検査を実施します。スクリーニング検査とは別名「ふるい分け試験」とも呼ばれるものです。

この段階で、どのような物質が検出されるか、その物質に含まれる成分が薬物に由来する物質であるかについて調べることになります。

スクリーニング検査後は、検出された物質が検体中にどのくらい存在するのか、その量を分析します。分析が完了した後は検査結果を確認し、正当性のあるデータだと判断されたら、検査結果が鑑定書としてまとめられます。

薬物検査を行う場所は、その企業によって異なります。社内で同日一斉に実施することもあれば、一般の尿検査や検便のように、自宅で採取して提出するというパターンもあるでしょう。

厳正に薬物検査を行いたいのであれば、社内での監視下による採取が望ましいということは、言うまでもないでしょう。