指定薬物の効果、法律、逮捕の刑罰

指定薬物とは、中枢神経系に興奮や幻覚といった作用をもたらすなど、人体に悪影響を及ぼすおそれのある物質を指しており、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」で規制されています。

指定薬物の規制

指定薬物を規制する動きが出現したきっかけとして、「脱法ドラッグ」の存在が挙げられます。国立医薬品食品衛生研究所の花尻(木倉)瑠理の発表によると脱法ドラッグは、1998年ごろから繁華街を中心に安値で流通し始め、次第にインターネットでも取引されるという事態に発展したといいます。

そして若年層を中心に脱法ドラッグの使用が増加したことを踏まえ、2006年に薬事法が改正されて、表面上一時的には脱法ドラッグの使用が落ち着きを見せました。

しかし、どうにか薬物の規制をかいくぐり、新たなドラッグを作りだして使用する者が後を絶たず、2019年現在もいたちごっこは続いているのです。

近年,麻薬や覚せい剤,大麻などの代用として,危険ドラッグと呼ばれる様々な化学物質や植物が法律の規制枠を逃れて販売,乱用されている。危険ドラッグとは,一般に,麻薬及び向精神薬取締法上の「麻薬」または「向精神薬」等として規制されてはいないが,それらと類似の有害性を有することが疑われる物質(人為的に合成されたもの,天然物及びそれに由来するものを含む)であり,もっぱら人の乱用に供することを目的として製造,販売等されるものを示す(従来,いわゆる「脱法ドラッグ」,「違法ドラッグ」と呼ばれていたが,平成26年7月に,警察庁及び厚生労働省が,危険性の高い薬物であることが理解できるような「脱法ドラッグ」に代わる用語を公募した結果,「危険ドラッグ」が選定された.本稿では,以下,「危険ドラッグ」を使用する)。

引用元: 危険ドラッグの規制と流通実態について | 花尻(木倉) 瑠理*Ruri Kikura-Hanajiri国立医薬品食品衛生研究所(PDF)

指定薬物の定義

指定薬物は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」の第2条15項で、以下のように定義づけられています。

この法律で「指定薬物」とは、中枢神経系の興奮若しくは抑制又は幻覚の作用(当該作用の維持又は強化の作用を含む。以下「精神毒性」という。)を有する蓋然性が高く、かつ、人の身体に使用された場合に保健衛生上の危害が発生するおそれがある物(大麻取締法(昭和二十三年法律第百二十四号)に規定する大麻、覚せい剤取締法(昭和二十六年法律第二百五十二号)に規定する覚醒剤、麻薬及び向精神薬取締法(昭和二十八年法律第十四号)に規定する麻薬及び向精神薬並びにあへん法(昭和二十九年法律第七十一号)に規定するあへん及びけしがらを除く。)として、厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて指定するものをいう。

引用元:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 | e-Gov法令検索

冒頭でも示したとおり、覚せい剤や麻薬には指定されていないが、違法薬物と同じように幻覚や妄想といった作用を及ぼしてしまうものであるため、有害なものだとされています。

「合法ハーブ」や「お香」などという名称で出回っている「危険ドラッグ」の中にも、指定薬物の成分が含まれている恐れがあります。

「危険ドラッグ」のなにが具体的に危険なのかと言うと、覚せい剤や大麻などの違法薬物と、物質の構造に近づけて製造されているという点です。

また、構造を似せるために複数の薬物を掛け合わせています。そのため、どんな違法薬物や指定薬物がどのくらい入っているのかもわからないような状態で取引されているのです。

身体にどのような影響を与えるのかということについても、はっきりとはわからないまま使用されているのも「危険ドラッグ」の特徴です。

化学式の構造が似ているだけではなく、作用も違法薬物と同じか、それ以上の効果が出てしまう恐れもあることから、これらの薬物も規制されることとなったのです。

危険ドラッグから指定薬物が検出された場合も、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」により裁かれることになります。

ただ、危険ドラッグから大麻や覚せい剤が検出された場合は、それぞれ「大麻取締法」「覚せい剤取締法」などといった法律により裁かれることになります。

指定薬物の種類

2019年12月17日時点の厚生労働省の発表によると、現在2378物質が指定薬物として規制されています。

参考: 指定薬物一覧(PDF) | 厚生労働省

指定薬物の数が年々増加していることからも、違法薬物を乱用してしまう人が決して少なくはないということがわかるでしょう。

指定薬物は、「合法ハーブ」や「合法リキッド」、「合法アロマ」「合法パウダー」「ラッシュ」などという名称で販売されています。名前から形状は想像できるかもしれませんが、粉末や錠剤のものもあれば、リキッドタイプのものまで流通しています。

最近ではパッケージにも凝っているものも多いため、薬物とは知らずに受け取ってしまったり、使用してしまったりする人は今もなお多い現状です。

平成26年4月1日より指定薬物の所持、使用、購入、譲り受けが新たに禁止されます。
違反した場合、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金又はこれらが併科されます。

厚生労働省では合法ハーブ等と称して販売される薬物(いわゆる脱法ドラッグ)対策として、脱法ドラッグに含まれる成分のうち、幻覚等の作用を有し、使用した場合に健康被害が発生するおそれのある物質を、薬事法に基づき厚生労働大臣が「指定薬物」として、これまで1,300物質以上を指定し、規制を行ってきました。

薬事法により、指定薬物の輸入、製造、販売、授与、販売若しくは授与目的での貯蔵又は陳列については禁止されていましたが、所持、使用等について特段の規制がなく、指定薬物を含む脱法ドラッグを安易に入手し使用する事例が数多く報告され、急性毒性や「依存症候群」等の精神症状を発現した事例、交通事故等による他者への危害事例が頻発しています。

引用元: 平成26年4月1日より指定薬物の所持・使用等が禁止になります | 厚生労働省

指定薬物を取り締まる法律

指定薬物を使用、または製造などをしていた場合は、どのような刑罰が下されるのでしょうか。

「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」の第76条の4においては、医療目的以外の指定薬物の所持や製造、輸出入、授与、譲渡、譲受または貯蔵および陳列が規制されています。これらに違反した場合、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金が科せられます。(第84条)

また、営利目的で上記に記したような製造や販売などの行為を行っていた場合は、さらに刑が重くなり、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金が併科されます。(第83条の9)

参考: 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 | e-Gov法令検索

参考: 危険ドラッグで逮捕された場合の流れや定義・罰則について解説|刑事事件弁護士ナビ

指定薬物は関税法でも規制される

「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」に定められる指定薬物は、関税法でも取り締まられています。

「関税法」の第69条の11においては、医療目的以外での指定薬物の輸入を禁止しています。そして、これを破って指定薬物を輸入した場合は「関税法」第109条に基づき、10年以下の懲役もしくは3000万円以下の罰金、もしくはこれらを併科すると定められています。

参考: 関税法 | e-Gov法令検索

指定薬物の検挙数や年代別データ

厚生労働省が発表した平成27年度上半期「医薬品医療機器法違反に係る検挙件数・人員」のデータによると、71名が指定薬物で検挙されています。

逮捕された態様のうち、もっとも多い割合を占めているのは「所持」で30名でした。次点で「販売」の22名、指定薬物指定薬物の輸入で逮捕された人数は17名となっています。

年齢別に見てみると、30代がもっとも多く30名、次に20代の20名、そして40代の14名という内訳になっています。男女比は男性9:女性1で、圧倒的に男性の薬物使用が多くなっていることがわかります。

データから見受けられるように、働き盛りの世代における薬物使用が多くなっている現状は、重くとらえなければならないでしょう。

また、仕事やプライベートでひどく落ち込んだり、悩むことがあったりしても、決して薬物に手を出さないような強い意志を、一人一人が持つようにすることが大切です。

ひとたび薬物に手を出してしまうと、人生が大きく狂ってしまうということを認識すべきでしょう。

全国の地方厚生局麻薬取締部において、平成26年中には医薬品医療機器法違反で、92事件、148名を検挙しました※。

また、平成27年1月から6月までの検挙者数の速報値は、69事件、71名でした。

(※警察等関係機関との合同捜査による検挙を含みます。)

引用元: 危険ドラッグ事犯の摘発 | 厚生労働省