薬物乱用の法律と処罰の一覧

違法薬物の使用により、精神的にも肉体的にも蝕まれていくことは周知のことです。

しかし違法薬物の乱用があった場合、具体的にはどのような罪に問われるのでしょうか。違法薬物の種類、初犯か再犯かという点においても処罰は異ります。

違法薬物は、大きく「覚せい剤」「大麻」「麻薬系(あへん・MDMA)」「向精神薬」の4つに分類されます。

また、シンナーのような「毒物や劇薬」に分類されるものもまた、違法薬物と同じように規制対象となっています。

それぞれどのような法律により取り締まられ、どのような処罰が下されるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

覚せい剤を取り締まる法律とその処罰

違法薬物というと、覚せい剤の「白い粉」を思い浮かべる方も多いでしょう。この覚せい剤を取り締まる法律には、「覚せい剤取締法」があります。

覚せい剤を所持し、使用した場合には、10年以下の懲役に処せられることになっています。初犯の場合には、懲役1年6ヵ月、執行猶予3年程度が量刑の相場だといわれています。

ただし、これは営利目的ではなかった場合の刑罰であり、営利目的で覚せい剤を所持・使用した場合は、1年以上の有期懲役、または500万円以下の罰金が科せられます。

第41条の2 2 営利の目的で前項の罪を犯した者は、1年以上の有期懲役に処し、又は情状により1年以上の有期懲役及び500万円以下の罰金に処する。

参照:「覚せい剤取締法」第41条の2第2項

また、覚せい剤の製造や輸出・輸入を行っていた場合、1年以上の有期懲役に処されますが、営利目的だった場合、無期または3年以上の懲役に加え1000万円以上の罰金が併科されます。

第41条 覚せい剤を、みだりに、本邦若しくは外国に輸入し、本邦若しくは外国から輸出し、又は製造した者(第41条の5第1項第2号に該当する者を除く。)は、1年以上の有期懲役に処する。

参照:「覚せい剤取締法」第41条第1項

大麻を取り締まる法律とその処罰

大麻は、「大麻取締法」という法律によって規制されている薬物です。大麻に関しては所持や使用、譲渡など、「大麻をどのように扱っていたか」という点でも処罰は異ります。

大麻を所持していた場合は5年以下の懲役に処せられます。初犯だった場合でも、大麻の所持や譲渡、譲受したことが発覚した場合には懲役6ヵ月から1年、執行猶予が3年程度科されます。

第24条 大麻を、みだりに、栽培し、本邦若しくは外国に輸入し、又は本邦若しくは外国から輸出した者は、7年以下の懲役に処する。

参照:「大麻取締法」第24条第1項

営利目的で大麻の栽培、輸入や輸出を行っていた場合、10年以下の懲役、または10年以下の懲役と300万円以下の罰金が科せられます。

営利目的でなかった場合は7年以下の懲役となります。

第24条の2 2 営利の目的で前項の罪を犯した者は、7年以下の懲役に処し、又は情状により7年以下の懲役及び200万円以下の罰金に処する。

参照:「大麻取締法」第24条の2第2項

これが初犯だった場合は、懲役3年以上、もしくは罰金150万円以下の判決が下されます。

大麻の栽培については、初犯では懲役1年6ヵ月から2年、執行猶予3年から4年が量刑の相場だとされています。

麻薬や向精神薬を取り締まる法律とその処罰

コカインやヘロイン(ジアセチルモルヒネ)といった麻薬、MDMAやLSDなどの合成麻薬や向精神薬は、「麻薬及び向精神薬取締法」という法律により規制されています。

同法律内で「麻薬」は、「ヘロインに類する麻薬」「ヘロイン以外の麻薬」「向精神薬」の大きく3つに分けられています。

いずれの薬物も、初犯で少量の所持であった場合には、懲役1年6ヵ月で執行猶予が3年程度付されるとなる場合が多いのですが、初犯であっても大量所持をしていた場合や輸入を行っていた場合は、実刑が下る可能性がきわめて高いとされています。

ヘロインに類する麻薬

ヘロインはとくに毒性が強く、依存性が強いことからも、他の麻薬より刑が重く定められています。

ヘロインに類する麻薬の輸出入および製造を行っていた場合、1年以上20年以下の懲役に処されます。営利目的だった場合は無期もしくは3年以上の懲役に併科して1000万円以下の罰金が科されます。

第64条 ジアセチルモルヒネ等を、みだりに、本邦若しくは外国に輸入し、本邦若しくは外国から輸出し、又は製造した者は、1年以上の有期懲役に処する。

参照:「麻薬及び向精神薬取締法」第64条

また譲渡や譲受、所持をしていた場合は、10年以下の懲役となります。営利目的だった場合は、1年以上の有期懲役、または500万円以下の罰金が併せて科せられます。

第64条 2 営利の目的で前項の罪を犯した者は、無期若しくは3年以上の懲役に処し、又は情状により無期若しくは3年以上の懲役及び1000万円以下の罰金に処する。

参照:「麻薬及び向精神薬取締法」第64条第2項

ヘロイン以外の麻薬

ヘロイン以外の麻薬とは、コカインや合成麻薬であるMDMA、LSDなどを指しています。ヘロイン以外の麻薬の輸出や輸入、製造を行っていた場合は1年以上の有期懲役が科せられるか、これに500万円以下の罰金が併科されます。

第65条 次の各号の一に該当する者は、1年以上10年以下の懲役に処する。

一 ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬を、みだりに、本邦若しくは外国に輸入し、本邦若しくは外国から輸出し、又は製造した者(第69条第1号から第3号までに該当する者を除く。)

二 麻薬原料植物をみだりに栽培した者

2 営利の目的で前項の罪を犯した者は、1年以上の有期懲役に処し、又は情状により1年以上の有期懲役及び500万円以下の罰金に処する。

3 前二項の未遂罪は、罰する。

参照:「麻薬及び向精神薬取締法」第65条

またヘロイン以外の所持や譲渡などは、7年以下の懲役に処されます。営利目的だった場合には、1年以上10年以下の懲役、500万円以下の罰金が併科されることになります。

第66条 ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬を、みだりに、製剤し、小分けし、譲り渡し、譲り受け、又は所持した者(第69条第4号若しくは第5号又は第70条第5号に該当する者を除く。)は、7年以下の懲役に処する。

参照:「麻薬及び向精神薬取締法」第66条第1項

向精神薬

向精神薬は主に医療目的で利用される薬物ですが、医師の監督から離れて乱用し始めると依存状態になり、自らの意思では使用を止められなくなります。そのような乱用の危険性があるため、違法薬物のひとつとして規制されています。

向精神薬の輸出や輸入、製剤や小分けを行っていた場合、5年以下の懲役刑となります。営利目的でこれを行っていた場合、7年以下の懲役または200万円以下の罰金が併科されることになります。

第66条の3 向精神薬を、みだりに、本邦若しくは外国に輸入し、本邦若しくは外国から輸出し、製造し、製剤し、又は小分けした者(第70条第15号又は第16号に該当する者を除く。)は、5年以下の懲役に処する。

2 営利の目的で前項の罪を犯した者は、7年以下の懲役に処し、又は情状により7年以下の懲役及び200万円以下の罰金に処する。

3 前二項の未遂罪は、罰する。

参照:「麻薬及び向精神薬取締法」第66条の3

向精神薬をみだりに使用したり、譲渡目的で所持した場合、3年以下の懲役に処されます。営利目的だった場合は5年以下の懲役が科せられるか、情状によってはこれに100万円以下の罰金が併科されます。

第66条の4 向精神薬を、みだりに、譲り渡し、又は譲り渡す目的で所持した者(第70条第17号又は第72条第6号に該当する者を除く。)は、3年以下の懲役に処する。

2 営利の目的で前項の罪を犯した者は、5年以下の懲役に処し、又は情状により5年以下の懲役及び100万円以下の罰金に処する。

3 前二項の未遂罪は、罰する。

参照:「麻薬及び向精神薬取締法」第66条の4

あへんを取り締まる法律とその処罰

あへんも麻薬の一種ですが、「麻薬及び向精神薬取締法」とは別に「あへん法」という法律によっても取り締まられています。

あへんが抽出できる「けし」を営利目的で栽培したり、輸出や輸入した場合は、1年以上の有期懲役または500万円以下の罰金に処せられます。

第51条 次の各号の一に該当する者は、1年以上10年以下の懲役に処する。

一 けしをみだりに栽培した者(第55条第2号に該当する者を除く。)

参照:「あへん法」第51条第1項

あへんを所持、または譲渡・譲受した場合は、あへん法第52条に定められるように、1年以上10年以下の懲役および300万円以下の罰金に処せられます。

第52条 2 営利の目的で前項の罪を犯した者は、1年以上10年以下の懲役に処し、又は情状により1年以上10年以下の懲役及び300万円以下の罰金に処する。

参照:「あへん法」第52条第2項

シンナーを取り締まる法律とその処罰

シンナーは、「毒物及び劇物取締法」という法律で規制されています。規制されている代表的な毒物にはトルエンも挙げられます。

この法律で指定される毒物や劇物は、市販でも入手可能で様々な製品に使用されていることから、所持自体は罪に問われません。しかしなんらかの方法で摂取したり、吸引したりした場合、処罰が下されます。

シンナーやトルエンは、みだりに吸引したり、摂取したりした場合、2年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられることになります。

第24条の2 次の各号のいずれかに該当する者は、2年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

一 みだりに摂取し、若しくは吸入し、又はこれらの目的で所持することの情を知つて第3条の3に規定する政令で定める物を販売し、又は授与した者

二 業務その他正当な理由によることなく所持することの情を知つて第3条の4に規定する政令で定める物を販売し、又は授与した者

三 第22条第6項の規定による命令に違反した者

参照:「毒物及び劇薬取締法」第24条の2

初犯であった場合は、懲役6ヵ月から1年、執行猶予3年程度が量刑相場だと判断されています。

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