職場で薬物検査が行われる可能性は

現在の日本では、一般企業でも薬物検査が行われることも珍しくはありません。職業によっては薬物検査が必須となる場合もあります。

企業が薬物検査を行う大きな目的は、社内への違法薬物の流入を未然に防ぎ、あらゆる不祥事のリスクを回避することにあります。

企業イメージをクリーンなものにする上でも、薬物検査は大きな効力を発揮します。

とくに薬物検査が求められる職種と、検査が必須となってくる職業について解説します。

薬物検査が必須となる職種

医師による診断書が必須で、薬物中毒者が弾かれるような職もあります。そのような業種は言うまでもなく薬物検査が必要となってきます。

診断書も、刑法160条、医師法19条および20条に従って作成されたものでなければなりません。

第160条
医師が公務所に提出すべき診断書、検案書又は死亡証書に虚偽の記載をしたときは、3年以下の禁錮又は30万円以下の罰金に処する。

引用: 刑法第160条 | Wikibooks

第十九条

 

診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。
診察若しくは検案をし、又は出産に立ち会つた医師は、診断書若しくは検案書又は出生証明書若しくは死産証書の交付の求があつた場合には、正当の事由がなければ、これを拒んではならない。
第二十条
医師は、自ら診察しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方せ ん を交付し、自ら出産に立ち会わないで出生証明書若しくは死産証書を交付し、又は自ら検案をしないで検案書を交付してはならない。但し、診療中の患者が受診後二十四時間以内に死亡した場合に交付する死亡診断書については、この限りでない。

引用: 医師法 | e-Gov法令検索

具体的な職業としては、医師や看護師といった医療従事者をはじめ、美容師や整体師、調理師などが挙げられます。

薬物検査が求められる業種

それでは薬物検査が求められる業種とは、どのようなものが挙げられるのでしょうか。どの業種においても「信用第一」ではありますが、とくに顧客からの信頼を得なければ成り立たないような業種については、薬物検査が不可欠です。

例えば、旅客業において、飛行機や電車などの操縦士は、出発から到着までの時間、乗客の人命を預かっています。

また、危険物車両に乗車する運転手は、危険物を送り届けるまでのルートで万が一事故を起こしてしまったときは、その地域の住民の命をおびやかす危険性もあります。

危険物の類で言ったら、原子力発電所に代表される発電施設やガスを扱う施設なども慎重に管理されなければならないものです。

このような社会的なインフラ事業を行っている業種においても、薬物検査は重要であるとみなされています。そのほか、保険関係や芸能関係、警備会社、先ほども挙げた医療従事者といった、その人自身への信頼が重視される職種も同様に、薬物検査が取り入れられています。

最近では、アルバイトやパートが多く従業員の回転率の速い接客業においても、採用時の薬物検査が取り入れられ始めています。

リスクを避けるために「違法薬物使用者を雇わない」という方針を示す企業が、それだけ増えているということでしょう。

どの職場でも薬物検査をし得る現状

このように、現在は幅広い業種で薬物検査は支持されています。薬物検査を行うことで、企業内外での信頼が得られることになります。

薬物乱用は社員一人の問題ではなく、企業イメージをダウンさせる大きな問題です。最悪の事態を考えてみると、一人の社員をきっかけに、企業内に薬物が蔓延してしまう可能性すらもあるのです。

そのような事態に陥ってしまっては、雇用主にもなんらかの責任が問われることになるでしょう。

薬物乱用は、われわれが思っている以上に身近な問題です。薬物への好奇心や、薬物の売人のうまい商売文句に乗せられて「1回だけ」などと言って、安易に使用してしまう人も決して少なくありません。

職場での薬物検査は、このような違法薬物への好奇心を抑制する働きも持ちます。「抑止力」という意味でも、薬物検査は有効に作用するということです。

「仕事に支障が出なければ良いのではないか?」と薬物を甘く見ている人も居らっしゃるかもしれません。

しかし、実際に薬物依存者の多いアメリカにおいては、薬物依存による労働力の低下が浮き彫りとなってきています。

2017年時点からアメリカでは、鎮痛剤であるオピオイドが合成麻薬として用いられるようになり、流行となってしまいました。「オピオイド中毒」になってしまう労働者が増え、覚せい剤同様に死亡例が急激に増加したことから、イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)も危機感をおぼえる事態となっています。

そのため、薬物検査や薬物依存症治療の導入といった対策をとる企業が出現し始めたのだといいます。

イエレン議長は上院証言でオピオイド中毒について問われ、「働き盛り世代で労働参加率が低下していることと関係があると考えている。問題はコミュニティーをむしばみ、雇用の機会が低下している労働者に特に影響している。これが偶然なのか、長期的な経済への弊害なのかは分からない」と語った。

引用:米国の労働力損なう鎮痛剤… オピオイド中毒が深刻化 死亡率上昇は「極めて異例」 | SankeiBiz(サンケイビズ)

こういった例からみても、従業員の違法薬物の使用は断固として禁止すべきであり、職場側も積極的に薬物検査を実施すべきだと言えるのです。

2019年現在の日本では、薬物検査に関する法律やガイドラインは定められていません。しかし、着実に薬物検査を導入する企業は増加しています。

職場での薬物検査は、今後さらに広がりを見せるでしょう。